味な広告
こちら、雑誌『POPEYE』の「はじめまして、東京。」という特集号に付いてくる別冊付録(おまけ)です。
手のひらに乗るくらいのかわいいサイズのくせして、その内容は100ページの超大作。
これをすべて、平野紗季子さんというフードライターが一人で書いており、
彼女の独自の審美眼によって選ばれた「味な店」を40件ほど紹介しています。
接客がぶっきらぼうだけど、とびっきりの餃子を出す店だったり、
何かと一家言ありそうな強面の店主(だけど実は優しい)がいる店だったり、
そこにはデートで使えそうなお店なんてひとつも出てきません。
食べログの点数に惑わされることもありません。
(だからこそめっちゃ信用できる)
お店の物語に浸りながら、料理の味を想像する。
その街に暮らす常連客の様子に思いを馳せるーー。
そんな気持ちで最後まで読み進めると、
突如、表4(裏表紙)にロイヤルホストの広告が現れます。
しかも、巻末には「私が『ロイヤルホスト』を好きな理由。」
という見開きのエッセイがあり、
ロイヤルホストのタイアップ広告(のようなもの)で締めくくられているのです。
え、なになに? これって壮大なロイヤルホストの広告だったの?
だとしたら、それって、なかなか幸せな広告の形なんじゃない?
読者は、有益な情報を得られて、
書き手もその個性を存分に発揮できて、
最後、いい感じのエッセイで全部持っていく広告主(ロイホ)。
それでいろいろ調べてみますと、
決してロイヤルホストの広告出稿の話が先にあったわけではなくて、
やはり「味な店」の企画が先にあったようです。
当然、冊子づくりにも制作費がかかるということで、
後から広告を入れるということになったらしい。(ほっ)
ただ、もうひとつ感心したのは、
広告であれば何でも良かったというわけではなくて、
平野さんが本当にロイホのことが好きで、
ロイホ一択でライターの平野さん自ら、死ぬ気で営業をかけた結果、
ロイホがスポンサーを引き受けてくれることになったということです。
ロイホが断ってたらどうなってたんだろう…。
そう考えると、この冊子が見事読者の手に届いたのって、ちょっとした奇跡ですよね。
「私の好きなものしか紹介したくない!」という強いこだわりと妥協しない姿勢に、
ちゃんとお金がついてくる…。
広告屋の端くれとして、背筋が伸びる思いがしました。
以上です。
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